介護保険制度とは
平成12年(2000年)4月から施行された、要介護高齢者を社会保険の仕組みによって社会全体で支える制度です。
介護保険制度は、市区町村が保険者となって運営しています。40歳以上のみなさんは、加入者(被保険者)となって保険料を納め、介護が必要となったときには、費用の一部を支払ってサービスを利用できるしくみです。
歯科診療の関わり
歯科医師、歯科衛生士が担う介護上の役割は居宅介護サービスの中の「居宅療養管理指導」になります。
介護を要するお年寄りなどに歯科的アプローチが介入すことで、栄養の改善、肺炎や発熱の予防、口腔機能の向上などがなされ、全身状態の改善、さらには介護度の軽減に繋がればと考えています。
「居宅療養管理指導」について
居宅療養管理指導とは
病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士等により通院が困難な利用者に対して、その居宅を訪問して、その心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図るものでなければならないとされています。
介護支援専門員との連携
「居宅療養管理指導」の必要性が生じた場合、歯科医師は、計画的かつ継続的な歯科医学的管理に基づく指導・助言を要介護者等本人・家族に行うとともに介護サービス計画(ケアプラン)を作成する介護支援専門員(ケアマネージャー)に対して必要な情報提供を行い、一方、歯科衛生士は当該歯科医師の指示に基づき、療養上必要な指導として要介護者の口腔内の清掃または有床義歯の清掃に関する実施指導等、歯科衛生指導を行うことになります。
なお、施設介護サービスにおける歯科の介護サービスは現在のところ位置付けられておりません。位置付けられていない。従って、施設入所の要介護者等から診療の依頼があった場合は、全て医療保険上での取り扱いとなります。
実際のサービス提供
歯科医師による「居宅療養管理指導」は、通常の場合、介護支援専門委員(ケアマネージャー)から歯科訪問診療の依頼が歯科医師に対して行われることによって始まります。
つまり、介護支援専門員(ケアマネージャー)が介護サービス計画(ケアプラン)作成の段階において、訪問調査結果から口腔内に何らかの問題がある場合、主治医意見書の「医学的管理の必要性」欄の中にある「訪問歯科医療」や「訪問歯科衛生指導」の項目にチェックが行われている場合及び要介護者本人へのアセスメント(課題分析)を行った際、口腔内に問題がみつかった場合に介護サービス担当者会議に報告、相談が行われ、その結果、歯科訪問診療が必要であるとされた場合に歯科医師に対して依頼が行われることになります(要介護者等本人の同意が必要)。
介護保険と医療保険の併用
歯科医師は歯科訪問診療を行うことになりますが、殆どの場合、何らかの歯科疾患を有していると考えられることから治療を行うことが想定され、この場合、歯科訪問診療に要した費用は医療保険で請求を行い、今後の計画的・継続的な口腔管理が必要であると判断し、本人・家族に対してその指導、助言を行うとともに介護支援専門員(ケアマネージャー)に情報提供を行った場合は「居宅療養管理指導」として介護保険で請求することになります。
歯科医療と在宅や介護分野
病院に入院している方、施設に入所している方、在宅の方の中には、歯科医療や口腔管理、歯科保健指導などが必要な患者さんがかなりおられます。
「施設や居宅などの生活の場への切れ目のない歯科医療」という視点から、在宅歯科医療の実施率を引き上げることが急務ですが、制度上の問題もあり伸び悩んでいます。今後は地域包括ケアの観点からも、医療・介護に関わる様々な職種の皆さんとの連携、また県や市町行政との連携をベースに、それぞれの地域の実情に見合った歯科医療を、さらに進めてまいりたいと思います。